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2004/12月号

(テキスト:呉 成徹)

<新企画>

 リズケン講師陣の中では、実は若手の部類に入る呉成徹氏による「それいけ!ドラム談義」です!普段から呉先生の会話センスは、そのオットリとした風貌からは想像もつかないほどに、時として鋭く、聴く者を遙か彼方に誘ってくれます(^^;)。さぁ、アナタも呉先生ワールドに飛び込んでみてください!

 今回紹介する楽器はブラジルの楽器です。
 まず、ブラジルといえばどの様な音楽を想像しますか?サンバやボサノバなど…なにか漠然としか答えが出てこない人が多いと思います。

 サンバと一口に言っても、色々なサンバがあります。ブラジルという国の大きさを地図か何かで見てください。こんなに広い国にサンバという1区切りの言葉で片付けてしまうのはもったいないです。

 そんな中で紹介するのは、リオのカーニバルで行われている音楽、エスコーラ・ヂ・サンバです。
 ブラジルのカーニバルが行われるのは毎年、キリスト復活祭の7週間前(毎年2月〜3月、ブラジルでは夏)に行われます。リオデジャネイロではパレードを行いますが、他の地域の人々は必ずしも、パレードを行うということではないようです。

 リオのカーニバルは土曜から火曜までの4日間行われ、現在のパレードの形になったのは、1928年にエスコーラ・ヂ・サンバ(サンバ・学校)が創立されてからです。

 当時のブラジルでは、ブロコ(黒人やムラートの音楽隊)の人達が町で演奏するのを禁止していました。1929年にブロコのメンバーが集まりエスコーラが作られプラッサ・オンゼと言う通りで小さなパレードを始めたのが現在の形になるきっかけとなりました。

 1935年になると政府がパレードを認め、プラッサ・オンゼから下町の広い通りに場所を移します。
 1984年にはマルケス・ヂ・サプカイ通りにパサレ−ラ・ド・サンバ(サンバの花道)が作られ、現在もこの場所で続けられています。

 エスコーラ・ヂ・サンバには、1チーム、300人以上のパーカッション隊(バテリ−ア)山車と装飾、エスコーラの団旗を持って踊る女性達と引き立て役の男性達、パレードに参加する人たち合わせて4000人〜5000人の人達が衣装の身を包み参加します。

 パーカッション隊が使う打楽器は次のような物です。

<スルド>
深胴の両面太鼓。肩から斜めに掛け、太いマレットで演奏する。低音部を担当する。

<カイシャ>
いわゆる薄胴のスネア・ドラムで、スティックで叩く。

<ヘピニキ>
深胴の小太鼓で右手にスティック、左手は素手で叩く。アンサンブルのリーダー的役割をする。

<タンボリン>
ジングルなしの小さなタンバリンで、片手に持ち一本のスティックで叩く。 プラスティックの3連バチもあり楽器を回転させて叩く奏法もある。

<クイーカ>
片面太鼓の鼓面に細い木の棒を取り付けて湿った布などで擦って演奏する楽器。ルーツはスペインのスィンボンバと言われている。

<アゴゴ>
メガホン型の形をしたカウベルを大小2連に溶接した楽器。ルーツは西アフリカである。

<ヘコヘコ>
スプリング・ギロ。バネの部分を金属の棒で擦り、リズムをとる。

<ガンザ>英語でシェーカーの意、2連〜5連までの物もある。

<パンデイロ>
タンバリンの少し大きくなった物、ジングルが3連になっている。ロシア人が持ち込んだとされる説がある。

他にも、サンバ・ホイッスル、タロル、ショカーリョなども使われます。

 このような楽器達を300人以上で鳴らすと、どの様な音になるのでしょう?ある人は、ヘビーメタルバンドの何倍もの音圧で聞こえると言います。とにかく凄い迫力でしょう。

 このように演奏と踊りをしながら、1チーム90分、全体で4日間のパレードをし、その年のチャンピオンのチームを決めるわけですが、ここで使われた曲が大ヒットして、CDセール等に直接影響します。

 近年のカーニバルは、観光やTV、レコード、ビデオなどで商業化してしまった事に嘆くミュージシャンがパレードに参加しなくなってきている現状もあります。
しかしブラジルの人たちはこう言います。「結局ブラジルではすべてがサンバに始まり、サンバに終わるのだ。」

 少しでもサンバに興味を持ったはCDなどで聞いてみてください、生の演奏とまではいかないですが、雰囲気は味わえると思います。
 現在日本でも各地でサンバ・パレードが盛んに行われているので、生演奏を見たい方は出かけて見ると良いと思います。

 次回は、ブラジル・バイ−ア地方の音楽・楽器達を紹介します。お楽しみに!


研究生 中里ゆきのさん 
アゴゴ、パンディエロ、ガンザ、クイーカーなど

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