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(テキスト:石川 武)

今回の偉人さん

Cozy Powell
(コージー・パウエル)

 ジェフ・ベック・グループに参加し、その後BEDLAMに加入したり、ソロ名義のアルバムを発表したりしましたが大きな転機はブラックモアズ・レインボーに参加したことでしょう。
 1998年4月 に事故死したのは記憶に新しい。

コージーのツーバスが堪能出来るのはコレ
TILT
Cozy Powell
Octopuss
Cozy Powell
  
 いやー、暑いっすねー。これだけ完璧に暑いと、もう許すって感じですか?でも、子供のころの夏っていつもこんな感じだったような気がするなー。空の色といい空気の色といい。影一つない道路を歩いていると、子供にかえったような気がするのは私だけでしょうか。
 とまあ、夏というと思い出されるのがヤマハ・ビッグ・ドラマーズ・キャンプです。栄えある第一回のキャンプに幸運にも講師として参加することができたんですが、そこで海外特別講師のコージーにはじめてあったわけです。今回お話するのはキャンプ初日の出来事。今となっては忘れられない大切な思い出になりました。
「ドラマーの食事量」


 キャンプ初日、まだ生徒たちが全国から集まってくる前日です。講師陣はデモ演の打ち合わせやクラス分けの準備などのため、昼過ぎに合歓に集まって色々と仕事をするのです。夕方になって仕事も一段落、今日はこの辺で食事と前祝にビールで乾杯ってな感じになったころのことでした。
 
 合歓の夕食はビュッフェスタイル、東京からの移動と色々な準備でくたくたの日本人講師陣は、思い思いに食事をとって(皆、皿に大盛りの食材をのせていましたっけ)ヤマハからご馳走していただいたビール片手に

 「乾杯―っ!!」

と言った直後のことです。到着の遅れていた海外講師陣がいよいよ到着したんです。
 この年の講師はコージー・パウエルピーター・アースキン。泣く子も黙るビッグドラマーです。
 ヤマハの萩原さんがコージーを連れて入ってきました。皆にコージーを紹介すると、日本人講師は皆拍手で歓迎。いっぱい入っている日本人講師たちは、いやがおうにも盛り上がります。萩さんが

 「石川くん、英語少しはいけるんだよね、コージーの相手してよ。」
 「はあ?」

っと、何を言うまもなくコージーが私の隣にすわりました。
 「なんでおまけ講師みたいな私がこんな大役を・・・」なんて頭では考えつつ、それでも一生懸命テーブルの先輩方を紹介したりしました。コージーは一通り挨拶を終わらせると、ぐるっとテーブルの上を見回し、私にボソッと言いました。

 「みんなよく食べるねー。」

 「コージーは食べないの?」

 「いや、今からとってくるよ。」

といって席を立ちました。するとテーブルの皆が「なんていってたの?」と聞くので「みんな結構食べるんだね、ってかんじですかね」と言うと、そこにコージーが食事をとって帰ってきました。

 皿の上には野菜一つまみとソーセージ3本がちょこんとのっただけ。

 「それだけですか?」

 「うん、腹いっぱいだと良いドラムはたたけないでしょ!

 すると皆が「なんだって?」とまた聞きます。しょうがなく説明すると、全員ビールと大盛りの食材を前に、パタッと手が止まりました。

 「そうだよな、食いすぎはよくないよな。」

 私なんかビールで顔は真っ赤、人一倍の胃袋を満たすべく、皿も人一倍大盛りでした。その後、コージーの普段のトレーニングはボクシングのパンチボールや、マウンテンバイクでコージーの家の裏山を駆け巡ること、などのありがたい話を聞いて、その日はお開きとなったのです。
 
 翌日からキャンプ本番、ピーター・アースキンのセミナーが始まってすぐのことでした。
 昼間どこかに消えていたコージーが、ピーターのセミナーを聞きに部屋に入ってきたのです、ポテトチップス一袋とでっかいソフトクリームソフトドリンクを抱えながら・・・。

 そしてセミナーが終わるまでの3〜40分の間にそのすべてをたいらげたコージーは、満足そうに会場を出て行ったのでした。
 

今月の一言


If You eat too much,You cannot play the good drum !

「ドラマーは腹いっぱいじゃ良いドラムはたたけないでしょ!」

解釈  “ 偉人さんもたまにはうそをつく! ”



'90 ヤマハビッグドラマーズキャンプにて
P.S.
 でもコージーのトレーニングは本当の話しだし、よく食うみんなを見ての、皮肉っぽいジョークだったと思いますけどね。何にしても憎めない、ナイスガイのコージーしでした。本当に惜しい人を無くしてしまったものです。心からご冥福をお祈りいたします。

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