「ボカ〜ン!」はリズケンがお贈りするエンターテイメント・マガジンです。
リズケン・スタッフや外部ライターの方による傑作をお楽しみください!
リズケンサイト・トップページへ
    

(テキスト:石川 武)

今回の偉人さん

Vinnie colriuta
(ヴィニー・カリウタ)

バークリー音楽院卒業後、LAに渡り、フランクザッパのバンドで2年半活動。その後10年近くスティングのバンドに参加し、マドンナ、デュランデュラン、セリーヌディオン、そしてチックコリアなど数多くのセッションワークも活発になっていった。
 日本でも活躍しており、宇多田ヒカルの初ライブや、松任谷由美のレコーディングでの演奏は記憶に新しい。
ヴィニーのドラミングはコレで聴く
Night Walker
Gino Vannelli
DOCUMENT
KARIZMA

ドラムのセッティング

 今回セミナーが予定されていたにもかかわらず、テロ事件の影響で来日が延期になってしまいました。がっかりした人も多かったでしょうね。
 最近BSでユーミンのスタジオライブを放映していましたが、こちらもたくさんの方がチェックされたことでしょう。やっぱり唄モンのヴィニーはいけてますな。

というわけで今回はカリウタさんなのですが、とかく人から、扱いにくい人とか、性格に問題があるとか、人付き合いが下手だとか言われているヴィニーさん。本当のところはどうなのでしょう?


 私がヴィニーにはじめて会ったのはかれこれ10年も前になりますか。はっきりと覚えていないのですが、多分ヴィニーのドラム・クリニックが最初に東京で行われたときだったと思います。
 私はヤマハのドラム・スタッフに呼ばれて、クリニックの手伝いに行ったのであります。
 会場に着くと、舞台上にはヴィニーの使用するヤマハ・ドラムが梱包を解かれた状態でばらばらに並べてあります。ヴィニーはまだ会場にはきていませんでした。

 「石川君!悪いけどドラムのセッティング、ラフでいいから組んでくれないかな?俺たち良くわからないからさー。」

と言うスタッフの言葉に

「僕もあまりよくわかりませんよ」

と言うと

「俺たちよりましでしょ。」

と一言。
しょうがないのでうろ覚えのセッティングをはじめました。


「・・・ヴィニーって扱いにくい人だって言うし、何か文句いわれたらどうしよう・・・」

などと考えながら、一つ一つ組み始めました。

 当時のセッティングはタムが3つあったと思います。やけに大きい人と言うイメージがあったので、いすも高めにセッティング。と思ったけど、あの人いすひくかったっけな、なんて思い出して低くしたり。けっこう苦心してベーシックなセッティングをしたわけです。
 ほぼ完成、といったところに、客席後方の扉から、熊のような影が・・。そうです、当時のヴィニーはでかかったんです。というより体重がめちゃめちゃおありになったんです。
 その姿を見た瞬間、事前に聞いていた前評判も重なって、私の頭は80%テンパイ。やにわに舞台に上がってくると、

「このセッティング、誰がやったの?」

とその第一声をとどろかせたのです。しかも眉間にしわを寄せて。これで私は120%テンパイです。
 「・・スタッフさん、適当にかわしてくれ・・」
と祈るような気持ちで周りを見回していると、スタッフの一人が

「このひと!!」

と言いながら僕を指差しています。次の瞬間、ヴィニーが僕めがけて歩き始めました。200%テンパイ・・・。僕の前で立ち止まると言いました。


「どうもありがとう、親切にここまでやってくれて、完璧じゃない!!」


そういいながら握手を求めてきました。今でもPERFECT!という言葉が耳にこびりついています。膀胱が緩みそうでした。

「なーんだ、いい人じゃない。うわさはやっぱりうわさだったのね・・」

 笑顔も素敵だったし、そういえば手もとてもあったかかったような気がする。などと感激しているうちに、ヴィニーはドラムに座りました。何か誇らしい気分で様子を見ていると、タムの角度なんかを微調整しています。
「完璧とはいってもやっぱり少しは調節するよな。」
などと思いながら、その後3,40分ヴィニーが微調整しまくるのを、口をあけて見ていました。


 「何がパーフェクトだ・・・・」


 

今月の一言


「Oh!Perfect!Thank you!」


解釈1
偉人さんも、自分を変えるために一生懸命なときがある

解釈2
火のないところに煙は立たない

Presented by RIZKEN / since 2001.03 / All rights reserved by KENMUSIC