偉人さんのお言葉

「ボカ～ン!」はリズケンがお贈りするエンターテイメント･マガジンです。
リズケン・スタッフや外部ライターの方による傑作をお楽しみください！

（テキスト：石川　武）

今月の偉人さん　　デイヴ・ウェックル

Dave Weckel
（デイヴ・ウェックル）

　1960年1月8日セントルイス生まれ。8才でドラムを始め、16才でプロ活動を開始する。「ナイト･スプライト」というバンドでニューヨークで活動中、マイケル･ブレッカー、スティーヴ･カーン、ピーター･アースキンなどに見いだされ、ミッシェル･カミロ、アンソニー･ジャクソン等が在籍するフレンチ･トーストに加入。スタジオワークの他、サイモン＆ガーファンクル、ジョージ･ベンソンなどのツアーを経て、1985年にチックコリア･エレクトリック･バンド結成、世界中にデイブの名が大きく知られるようになる。卓越したテクニック、完璧なまでのタイム、オリジナリティと創造性に溢れたドラミングで多くのドラマーに影響を与えファンを魅了している。

ウェックルの超絶ドラミング。


「Heads Up」 Dave Weckel	「Out Of Sight」大高清美

「いいよ！」

　出そうで出てこなかったデイブ。
　実は私、デイブとはインタビューその他では一番たくさん会ったかも知れないのですよ。ヤマハのビッグドラマーズキャンプも一緒だったし、インタビューもしたし、セミナーにもずいぶん行ったっけ（取材含め）。
　ということでどの場面のエピソードを書こうか迷うのだけど、今回は一番最近会ったときのことを書きましょう。

　昨年のNAMM　SHOWに行ったときの話です。
　NAMM　SHOWは言わずと知れた楽器関係の一大コンベンション。私はREMOのエンドーサーとして、毎年行われるドラムサークルに参加すべくロスへとわたりました。そのときの一行は、私の後輩パーカッショニスト・萱谷君と、現在その地位を不動の物にしつつあるギタリストの矢掘孝一氏、現在ソロアルバムも順調なハモンドオルガン奏者の大高清美さん、そして元ジャズライフの真瀬さんというメンバーであったのでした。

　今回はNAMM　SHOWのほかにも各自それぞれ色々と目的を持っての渡米だったのですが、中でも大高清美嬢の目的は、次回のソロアルバムはぜひともデイブ・ウェックルと録音したいということで、そのネゴシエーションをすることだったのです。そこで一応面識のある私が最初の挨拶だけでもしようと言うことになったわけです。

　私は仕事の関係上、ほとんどREMOブースにいたのですが、都合のいいことに２，３日目にREMOブースでデイブのサイン会があるではありませんか。よし、じゃあここでデイブに挨拶しようということになり、ただ実際決まってしまうと

「何て話そう？こういうネゴの場合どんな単語を使えばいいんだろう？難しいビジネスの話になっちゃったらどうしよう？大体俺のことなんて覚えてなくて、君誰？何てなったら、清美嬢に大口叩いていた俺の面目は丸つぶれだ・・・・」

　だんだん不安になってきたのであります。何度か会ったことがあるっていったって、世界をまたに賭けて活躍しているデイブです、そんなスタッフには何千人と会っているわけだし、こりゃまいったな・・なんて雰囲気になってきちゃったのですな。さてサイン会の時間になりました。

　別のところからREMOのブースに戻ってみると、なんと何十人ものサイン待ち行列ができています。他にも色々な人がサイン会をしていましたが、こんな列はなかったのです。

「スゲ－、やっぱりこっちでも超人気だ・・・」

先ほどまでの不安がまたもや倍増。（別件ですが、私この記事を書き始めてから、私は何て小心者なのだとつくづく思うようになりました。いつもこんなビビッてるエピソードばっかりだ）
　それでも勇気を出して、ちょっと行列がおさまったときにデイブに話し掛けました。

「こんにちはデイブ」

するとデイブ

「やあ、来てたんだ、元気？」
「えっ？おぼえてるの？」

と小心者らしく聞くと

「もちろんさ、どうして？」

という具合でした。まあ覚えてるんならいいや、それより本題の話だ。難しいことにならないよう祈りながら、おそるおそる清美嬢の話をすると

「いいよ！清美も来てるんでしょ、今会ってスケジュールのチェックしようか！」

と、とんとん拍子に話が進んじゃいました。

「スケジュールって、そんな簡単に返事していいの？大高さんがどんなプレイするのかとか、エージェントはどこなんだとか、質問は無いわけ？・・・」

というわけで、またもや偉人さんのフレンドリーなやさしさ、及び気軽さを垣間見たのでした。
　現在、大高清美嬢のデイブとの共演CDは絶賛発売中です。デイブファンの皆さん是非チェックしてくださいね。いいアルバムですよ！！！

今月の一言

「いいよ」
“Sure!!”

解釈・・・偉人さんって、何て簡単なの？？？！