カーク・コビントンは、ギターのスコット・ヘンダーソンとべースのゲイリー・ウイルス率いる“トライバル・テック”のアルバムで初めて聴いたのでした。トライバル・テックは、ある意味ネーミングそのままっちゅう感じの超絶バンドですが、最初はあまりピンとこなかったものの、カークが加入して2枚目の「Reality Check」というアルバムでかなりハマッてしまいました。メタルっぽいドラミングから、ジャズ・ファンク、スイングまで、実に融通無碍なドラミングで「パワー感はあるのに優しくてジェントル(^^;)、テクニカルだけど歌ってる」というカークの演奏に聴き惚れていたのでした。
そうしてカークを知ってから1〜2年後、トライバルテックが初来日したときに、インタビューという形式でカークに会うことができました。インタビューではテクニック論だとか、ビートのスタイルとフィールなんかについて図解までしてもらい、その後ライブ会場でのドラムのセッティングから、リハーサル、本番までじっくり見ることが出来ました。
その時はヤマハのメイプル・アブソリュートのセットで、シンバルは自分で持ってきていました。ハイハットがAのマスター・サウンド、ライドはK PreAged、A Custom FlatRide、Remix BreakBeat Ride、あとは変わったところでは22" Swish Knockerを使ってました。
カークというのはすごい巨体で、バスドラム22のセットに座っているのを客席からみると、タムの上に上半身がモロに見える感じです。無論、椅子もそこそこ高めではありましたが。で、その身体からどんな音が飛び出してくるかと思いつつ、叩いているすぐ後ろで聞いていると、会話している肉声をかき消さない程度の小音量から、エレキサウンドに対抗する大音量までがスムーズに耳に痛くなく奏でられるのでした。
ドラミング全体として太鼓はアタックを強く、シンバルはタッチを優しく、という感じがあって、骨太なタイコにシャープで切れのよいシンバルサウンドでうまくバランスをとっていました。カークは、ちょっとハネた16の刻みを使うことがあるのですが、これがまた、音量を抑えていながらニュアンスはしっかり伝わって来て、飄々と叩いているのですが、実に奥深いドラミングなんですね〜。
カークはピアノも演奏し、ドラムの仕事が無いときにはピアノで旅もしていたとかなんとか...。「ドラムだけ演奏していて、どうやってコードのことを憶えるっていうんだい?」なんていう台詞を聴くと、まぁ当たり前のようなことですが、彼のドラミングから感じられる音楽性はそこからくるのでしょう。最近では、ロスでもかなり人気のドラマーのようで、デニチェンも「彼は今一番いいかもな」と言っていたそうです。
音に関しては、まぁやっぱり聴いてもらうのが一番ですが、私としては、まずは「Reality Check」を聴いてもらいたいですね〜。是非是非おためしください!
(99.10.16)