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(テキスト:ヤマムラマキト)
 みなさんお元気ですか?夏はどこへいったのやらと思うような涼しい日もあれば、いきなりジメジメと暑い日もあり、暑がっていいのやら寒がっていいのやらよくわからない日々が続いております。

 さて今回はもはやシリーズネタとなった「ライドの達人」その4を紹介しましょう。その人の名はスティーヴ・ガッド。説明する必要もない神様のような存在ではありますが、最近の若いドラマー達は結構知らない人も多いようですね。興味を持って聞いてもらえたらこれまた幸いなのですが。

 そもそも私のライドバカに拍車がかかった背景にはガッドという存在がありました。1〜2年前だったと思いますが、渋谷のタワー・レコードでSTEPSのSmokin' in the PitがCDになっているのを発見した私は、かつて大学時代にレコードで買い何度と無く聴いたこの音源をあらためて聴き直したのでした。

 このアルバムは2枚組で、六本木ピットインで行われたSTEPSのライブを収録したものです。すばらしい演奏がたくさん収められているのですが、2枚目の2曲目にNot Ethiopeaという曲があり、そこにはゲスト参加している渡辺香津美氏のギターソロや、ガッドのドラム・ソロが入っています。当時の私はと言えば、このレコードを引っ張り出してきてはいつも2枚目の2曲だけをなんども聴くという始末で、ようするにガッドのドラムソロばかり聴いていたのですね。実はこのアルバムをこのような間違った使い方をしていたドラマーは結構いるようで、この曲でのドラムソロはかなり素晴らしいものです。

 そして、このアルバムを聴きながら私が夢中になるもうひとつのポイントが、シンバルのサウンドでした。録音されたガッドのプレイなんて山のようにあるでしょうが、特にこのアルバムを聴きながら「いったいどういうシンバルをどう叩いて、こういうサウンドになるのだろう?」と思っていました。粒が大きくて明朗なピング音から、クラッシュサウンドへスムーズにつながり、サスティンが程良く止まるライド。スタジオで録音されたものであれば、ある程度ミックスでコントロールできるでしょうが、これはライブ盤。太鼓の音から判断するに、それほど細かく手が入っていないと想像するも、シンバルのサウンドに関しては今まで自分がサンプリングやレコーディングで関わってきた音とはどうにも次元が違う。

 そんな思いで、いろいろなシンバルを試してきましたが、その謎は未だに解明されておりません。もちろんいろいろな情報もありますが、ガッドが使っていたシンバルがなんであるとか、そういう問題ではなく、楽器に加えてタッチや演奏法など、私の中のひとつの究極の像として存在しております。

 最近のエリック・クラプトンのライブでのガッドを見るに、以前のトレードマークであったゲソゲソな腐ったような見た目のシンバルではなく、普通に売っているジルジャンのシリーズを使っています。そのサウンド自体はある意味普通なのですが、やはり演奏は実にすばらしく、結局何を使っても上手いのかこの人は、と思うとやるせないばかりではあります(笑)

 それにしても、YD-9000Rと独特のシンバルサウンドで全世界のドラマーを魅了したガッドのサウンド・コンセプトは、聴けば聴くほどに、多くの謎と多くの希望を私に持たせてくれるのであります。

  


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