涼しくなったと思えば暑くなり、暑いかと思うと寒くなる、そんな残暑もやっとこさ収まった模様ですね。このところはずいぶんと涼しく、秋ならではの乾いた空気に、芸術の香りと食欲の香りがしてまいります。
今回ライドの達人シリーズその5は「デイヴ・ウェックル」です。「なんだかんだ言ってもマキトはウェックル好きだよな〜」なんて言われてしまいそうですが、えぇその通りです(笑)やっぱりなんと言っても大好き。だって、ドラマーとしてのアイデンティティをこれだけたっぷり感じさせてくれるドラマーってなかなか居ないと思うのです。アンサンブルの視点とか伝統的なスタイルの視点とか、そんなのはとりあえずどうだっていいのです。あれほどまでに活き活きと、ドラムの美味しさを感じさせてくれたドラマーは、僕の中ではガッド以降、彼がダントツなのです。
ま、そんな好き好き贔屓節はともかくとして、今回はウェックルネタであります。ライドバカ一代でなぜウェックルなのか...?ちょっと結びつきにくいかもしれませんね。
ウェックルのレガートでは、何度聞いても小気味いいなぁと思うのが、チックコリア・エレクトリック・バンドのファーストアルバムに入っている「Got a match」のハイハット・レガートです。オープン/クローズ自在で、クールでコントロールの効いた演奏にはしびれちゃうのですね。ウェックルが登場したのは、私が20代の頃なのでもう随分前になります(笑)が、楽器フェアのデモ演奏の際に、左足のペダル操作だけでフット・クローズとフット・クラッシュを組みあわせて、「フチチー」とやっていたのにビックリという事件がありました。これ、やってみてください、結構難しいですよ。しかも、タムやら回してフレーズをやりながら、合間に「フチチー」ですから(^^;)
で、私のウェックルの思い出といえば「ヤマハ・ドラマーズ・キャンプ」です。合歓の郷にあるヤマハのMUSICキャンプで行われていたこのイベントは、ピーター・アースキンやスティーヴ・ジョーダンなども来た、一大ドラムセミナーだったのですね。環境は抜群なのですが、三重県ということもあり、交通費を含めて10万近くかかるものでしたが実に素晴らしいものでした。リズケンの江尻先生や石川先生もこのキャンプの講師として参加していました。
このキャンプにウェックルが来るというので私も参加し、運良くウェックルのレッスンを受けることができました。基礎練習から始まっていろいろやりましたが、フレーズの組み立てについてレッスンを行っていたときに、ウェックルがデモ演奏をしました。僕らはそれに見とれていたわけなのですが、ライド・シンバルをレガートする音が実に綺麗でした。諸々の解説が終わった後に「シンバルの響きがとても綺麗で、ピング音とサスティンの混じり方など、奏法上でなにかテクニックなどあるのか?」と質問をしてみました。すると「いい音がするようにと思って叩いているだけだ」という答え。その場にいた僕らは、質問をグリップやストロークに変えて聞いたりもしましたが、ようするに「耳で判断」ということでした。
あのときの、シンバルからフワーっと音が広がって、綺麗に四方に散らばっていく様は、今でも憶えています。かなり美化された記憶ではあるでしょうけれど、あの時に、CDに入っているこの人達の音は、ミキサーやエフェクターを通って綺麗になっているのではなく、逆に生はもっと綺麗で表情に溢れていて、CDやレコードではそれは伝わらないのだなと感じたほどです。
ま、今回はシンバルをネタにしたひとつのエピソードでしたが、楽器を奏でるということを感じていただければと思います。