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・楽器オモテ・ウラ話し_バックナンバー
今回の質問

「太鼓の色によって音は違うのですか?」


西尾さんによるお答え


 ずばり 「違います!」


● ミュージシャンに付きまとう究極の選択

 あなたの目の前に2台のスネアドラムが並んでいます。
 1台はサウンドがメチャクチャ自分好みで、これ以上ないほど良いと思うんだけど、色は見ただけで吐き気をもよおす程最悪にきらいなカラー。
 もう1台は、見た目は最高にかっこいいと思うのに、サウンドはそれほど良いと感じるわけでもなく、まあ「可もなく不可もなく」といった感じ。

 どちらか一方しか買ってはいけないとしたら、あなたはどちらを選びますか?

 音楽活動は、一種のエンターテインメントなので当然見た目も大切です。使用目的が「ステージ」中心であれば見た目を重視するでしょう。逆に「スタジオ」メインで、人の目を気にしないのであればサウンド重視になると思います。
 またまた必要性の話になってしまいましたが、プレイヤーにとって見た目はとても大切なポイントですね。

 では、見た目(色)とサウンドにはどのような関係が有るのでしょうか。


● どんな種類があるのかな? ドラムのカラーリング

 皆さんが、ドラムのカラーリングの種類としてすぐに思い浮かべるのは「ラッカー フィニッシュ」と「カバーリング」の2種類だと思います。
 これら以外にも「オイル フィニッシュ」、「化粧板仕上げ」、「ワックス仕上げ」等、色々な種類や方法により楽器の見た目を仕上げています。
 でも、一言で「ラッカー」とか「カバーリング」といっても何種類もあったりするのをご存知ですか?

◆ ラッカーフィニッシュ:いわゆる塗装仕上げの事を総称してこう呼んでいます。見た目の美しさから、日本では高級モデル=ラッカーフィニッシュというイメージが強いですね。
 一般的にラッカーというのは、ニトロセルロースや樹脂を揮発性溶剤に溶かし顔料を混ぜた塗料の事を言います。この溶剤に溶かす素材や顔料の違いによって塗料の特性が変わり、微妙ですがサウンドにも変化をもたらします。
 代表的なものとしては先述の「ニトロセルロース」や、「ポリウレタン」「エナメル」「UV」系の樹脂が使用されています。
 以前は、ニトロセルロース系のラッカーが主流でしたが、仕上げの難しさや経年劣化による変色やクラック(ひび割れ)の発生しやすさから、ほとんど見かけなくなってきています。現在各メーカーがラッカーフィニッシュと呼んでいるもののほとんどがポリウレタン系の塗料で、その仕上げの美しさは目を見張るものがあります。しかし仕上げの美しさを追求するあまり塗装が厚くなり、シェルの自然なバイブレーションを妨げる結果を招いています(と、思います)。
 
◆ オイル(ワックス)フィニッシュ:いわゆる「艶消し」系のフィニッシュです。
見た目の渋さから、近年非常に人気が高まっています。
 ラッカーフィニッシュに比べ、塗装が薄く、シェルの特性は出やすくなりオープンなサウンドが選られやすくなります。

◆ カバーリング(&化粧板):シェルの外側に(まれに内側にも)シェル材とは異なる素材のシートを巻き、文字どおりカバーをした仕上げ。
 一般的にはカバーリングよりもラッカーフィニッシュの方が音が良いとされていますが、その概念は完全に間違っています。あなたの求めるサウンドによってはカバーリングの方が良い結果を得られることも多々あると思います。
 カバーリングの種類には、いわゆる塩ビ、セルロイドなどのプラスティック系素材、ステンレス スティールなどの金属、バーズアイ、カーリーなどのメイプル、マホガニー、タモ、ブビンガなどの木材が上げられます。基本的にシェルの外側をカバーするものであれば、すべてカバーリングと呼んでしまって良いでしょう。(カバーリングの事を「セル巻き」と呼ぶ人も多いと思いますが、これは、その昔カバー材にセルロイドが多用されていた事のなごりです。)
 当然の事ながら、カバー材の種類によってサウンドは大きく左右される事になります。カバーリングによってシェルの強度がアップしたり、シェル材だけでは選られない音が加味され、音の広がりまでもがコントロールされる事になります。
 ドラムメーカーでは、ソナーやカノウプス等が、この事実を巧く取り入れているメーカーといえるでしょう(ギターだったらギブソン「レスポール」が有名ですね)。


● 色でサウンドは変わるのです(微妙だけどね)

 カラーリングの方法についてあれこれ書いてみましたが、では、その方法とサウンドにはどのような関係があるのでしょう。
 ここまでの話でいいたい事はなんとなく解っていただけましたよね。

 カラーリングにも素材の違いがあり(これは方法だけでなく、色も含めて)、当然その事実が楽器のサウンドにも少なからず影響を及ぼすのです。
 メイプル単一素材のシェルよりも、カバーに更に硬い素材を巻いたほうが硬質でタイトな音色になります。その逆もしかり。塗装も厚ければシェル振動は押さえられるし、薄ければ影響が少なくなります。

 余談ですが、ニトロセルロースを使用していた頃のグレッチは、ナチュラルフィニッシュが一番良い音がすると言われている事実もあります。
 DWやカノウプスの様に、フィニッシュの違いでサウンドが変わる事を意識しているメーカーもありますが、ほとんどのメーカーはそこまで念頭において楽器を作ってはいません。そういう意味でも楽器を選ぶ時は、必ずサウンドチェックをしなければならないでしょう。そして、試奏した楽器が良いと思ったら、それに決めないと.....。

まあ、見た目を重視するのか、見た目よりもサウンドを重視するのかは、あなた自身が決める事なので必ずそうしろとは言いませんが。


● 今月の結論
 でも、やっぱり見た目が大事だよね!
 だって、吐き気がするほどきらいな色の楽器なんて欲しくないもん!!!!
 


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