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「ドラマーのための雑学講座」

第9回
奏法と音 〜その2〜




 前回は手に関する奏法を解説して見ましたがいかがでしたでしょうか?

 スティックのグリップの仕方を変えただけでサウンドがずいぶん変わることは実感していただけたと思います。人によっては楽に音量が出せるようになった人もいるかもしれません。
 このように、奏法を研究することで自分にあったやり方があるんだということだけでも認識していただけたらうれしいです。

と、言うわけで今回は前回に引き続き奏法と音をテーマに話を進めてみたいと思います。手をやった後は当然脚の登場です!




§1 脚も手と同じ、まず脚ありきです!

 ドラマーの中には

「ペダルが思うように操作できない」
「思ったタイミングでペダルを踏めない」

などと言った悩みを抱えている人が少なくないでしょう。脚は手に比べ、なかなか思うように動かせないものです。
 しかし、ここで書いた「ペダルが」「ペダルを」と言う部分に間違いがあることに気づいている人は少ないと思います。

 前回スティックのグリップで書いたことと同じように、BDはペダルで演奏するのではなく脚で演奏する物であるということをまず理解しましょう。ペダルは脚の上下運動をビーターの前後運動に変換する装置であり、ペダル自体で演奏しているわけではないのです。脚が動いていなければペダルが動くはずがありません。



§2 まずはゆっくり、確実に

 脚で演奏していることを理解すれば、ペダルに頼った演奏をすることがなくなります。言い換えると「自分が出来ないことはペダルが原因ではない」と言うことです。

 もちろん自分の踏み方や筋力などの要因に合わせたペダル選びは重要ですが、まずは確実に脚が踏み下ろされているかどうか、踏み込めているかどうかが、ヘッドからのリバウンドを適切に処理できているかどうかが問題です。自分が出来ないことは出来ないのです。しっかりと踏めていなければビーターがヘッドにあたらないことは言うまでもありません。

 くどいようですが、ペダルがうまく操作できないのは、しっかりと踏めていないからなのです。

 1音1音ゆっくりと確実にしっかりと踏んでみてください。このとき膝の動きを意識しながら力を抜いてドスンという感じがいいでしょう。絶対に確実に音が出るはずです。しかもかなりしっかりした音が出ているはずです。
 この時点であればペダルの影響はほとんど感じることなく、しっかり操作できるはずです。そして、ペダルが無い状態(みんな床を踏み鳴らしたりしますよね)なら出来るんだけどペダルがあると.........と言った現象がだんだん無くなってくるはずです。



§3 脚も手と同じ要領で練習してみましょう。


 手の基礎練習は数限りない方法が紹介されていますが、脚の練習に関してはあまり詳しく解説されていないのが実情です。
 そこで考えるのが「手と同じことを足に置き換える」と言うことですね。

ここに辿り着く人は結構多いと思います。でも、あくまでフレーズの流用にとどまる人が多いのではないかな?
 ここでいう「手と同じ要領で」と言うのは、足も手の場合と同じようにストロークの種類を意識しながらと言うことです。

 スティックコントロールを勉強する場合「FULL、TAP、DOUW、UP」と言った種類のストロークを意識します。これが効率の良いスティックワークの基礎になるからです。では、この考え方を脚に当てはめて考えたらどうでしょうか?

 膝の動きを意識しながら、ヘッドからのリバウンドに逆らわず膝が常に上下運動をする=フルストローク、膝の上下運動が無い状態(ヒールダウンですね)で踏みつづける=タップストローク、膝を落とし止める=ダウンストローク、膝をあげながら足首の動きを使って踏む=アップストロークと言った感じですね。言葉ではわかりにくいかも知れませんが1度試してみてください。
 ヒールアップやヒールダウンもリストショットやアームショットに当てはめれば解決します。



§4 アップやダウンを意識することで見えてくること

 前章で行った様に「手と同じように足を意識して練習してみる」といろいろと面白い発見があります。

1、アップやダウンが踏み分けられるようになると音色の変化をつけられることはもちろん、ビートも安定してくる。

 奏法が変われば当然音色が変わることは当然ですね。しかし、こればかりでは無く実はビート感がしっかりつかめるようになるのです。曲のビートはダウンビートとアップビートの繰り返しが基本となってきます。
 4/4拍子の最も単純な形が1、3拍目がダウンで、2、4拍目がアップになります。裏拍と呼ばれる部分がアップビートになるわけですね。
 ダウンビートは地面に着地する感じで、アップビートは地面から跳ね上がる感じを想像していただければわかりやすいと思います。
 したがってダウンビートはしっかりと着地した感じが出せないと浮ついた不安定な演奏になってしまうわけです。

もう、お分かりですね!

 脚のダウンビート(着地した感じ)を演奏する場合はダウンストロークを使えば、おのずとリズムが着地しビートの安定感が増すわけです。
 脚のダブルに当てはめ、より実践的に考えると

「頭拍スタートのダブルはダウンアップ(タップ)奏法(スライド奏法にもつながります)」
「裏拍スタートのダブルはアップダウン奏法」

を使うことでリズムの安定感、疾走感が見違えるようにアップします。


2、ペダルの動きに頼らず、ヘッドからのリバウンドを感じながら自然に演奏できるようになる。

 自分の足の動きがしっかり意識できるようになることで、ペダルの動きに頼らずしっかりとボードを踏み込めるようになるとともに、ヘッドからの微妙なリバウンドに対応する能力がアップします。その結果、サウンドの変化やビートの感覚など自分のやりたいことがはっきりと音に出せるように成るはずです。

 リバウンドに確実に対応できる様になればペダルのスプリングをはずした状態でも一定のビートなら踏みつづけられるように成っているはずです。


3、今まで個別に認識していたいろいろな奏法の意味が見えてくる

 ヒールダウンとヒールアップ、ダブルを踏むときのアップとダウンの関係、ビートのフィーリングと奏法の関係等、自分の踏み方が明確になることでこれまで別々の物であると認識していたもに実は必然性があることがわかってきます。
 そして「曲」というひとつの流れの中で自分の感覚が淀むことなく流れつづけていくことが出来るようになるわけです。




§4 そして.....

 偉そうにいろいろ書いてしまいましたが、実際は言葉で言うほど簡単ではありません。自分自身もしっかり出来ているとは思っていないし、これはあくまで僕自身の考え方であって、唯一の正しい理論だとも思っていません。
 無駄に重ねた長いキャリアの中で自分に合った奏法を模索する中で生み出した考え方なのであながち間違いではないと思いますが.....。

前回、今回のコラムで何が言いたかったかというと、

「みんな、もっと良い音を出す方法を考えようよ!」
「もっと楽に叩ける方法を探そうよ!」
「もっと自分自身にあったやり方を考えようよ!」

と、いうことです。
いくら良い楽器を手に入れても、その楽器にマッチしない使い方やたたき方をしたら意味ありません。いくら良いプレイをしても汚い音では魅力半減です。
曲に合わないフレーズや音はもってのほか!!!

 自分自身が求める物を自分自身にあったやり方で手に入れる努力は絶対に必要です。ただの楽器屋のオヤジがここまで考えたのです、みんなに出来ないはずがありません。


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