「ボカ〜ン!」はリズケンがお贈りするエンターテイメント・マガジンです。
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今月のおすすめ担当 リズケン研究生
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高取岳史
「Trio In Tokyo」 Michel Petrucciani
オススメの1枚を選ぶ、と聞いて結構悩んだのですが、やっぱりコレダ!!と思ったのが
ミシェル・ペトルトチアーニ・トリオ
の
「ライヴ・アット・ブルーノート東京
」ですね。
このCDは1997年の秋にピアノのミシェル・ペトルトチアーニとドラムの
スティーブ・ガッド、ベースにアンソニー・ジャクソンを迎えた最高のトリオ・バンドのライヴです。
ミシェル・ペトルチアーニ
は、1962年の12月28日に音楽家の家庭の3男として生まれました。彼は、先天性の骨疾患である大理石病という病気のハンデを持っていました。骨が発育不足になる病気のため、身長が1メートルを越すことはなく、ピアノを演奏するときもペダルに電動の補助装置を使わなければならなかったそうです。そして医師からは、20歳までの命だろう、とも言われていたそうです。
スティーブ・ガッド
は、ドラムを勉強する人、している人、ドラマーを名乗る人間問わず、知っているべき素晴らしいドラマーの1人だと、僕は思います。アンサンブルを重視し、その中でよりグルーヴを大切にし、新鮮で驚異的なテクニックで常に観客を圧倒する。最近ではエリック・クラプトンが来日したときにサポートメンバーとして来たのが印象に新しいですね。
そして
アンソニー・ジャクソン
。勿論この人も素晴らしいベーシストであり、数々の有名ミュージシャンと共演し、数多くのCDに顔を出しています。とても落ち着いた柔らかい音色で、全体を包み込むような、それでいて出るところは出て、きちんと自分を歌っている、そんなイメージを僕は感じました。
本当に残念なのですが、このトリオのライヴはもう2度と見ることは出来ません。何故ならば1999年の1月6日、あのミシェル・ペトルティアーニがこの世を去ってしまったからです。同年の2月には再来日公演が予定されており、既にチケットの予約までしていた僕には、そのブルーノート東京からの訃報が信じられず、何度も聞き返したのを覚えています。そんな中で、1997年の公演をステージで間近で見ることが出来ていた自分は、まだ幸運だったのかしれません。
「死」という世界が身近にあり、だからこそ今生きているということの素晴らしさ、その大切さを知っていたのではないでしょうか。ミシェル・ペトルティアーニの旋律にはどこかもの悲しい部分を感じます。でも決してそれだけではなく、そんな中で本当に音楽を楽しんでいる。そして、ミシェル・ペトルティアーニの悲しく、力強く、激しいメロディを、スティーブ・ガッドのドラムが、更に引き立てるフレーズとグルーヴで答え、アンソニー・ジャクソンのベースが優しく曲に味付けをする。
よくジャズは
「音楽で会話をする。」
なんて表現したりしますが、それを本当に感じさせてくれる、そんな最高のライヴ・CDだと思います。
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