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今月のおすすめ担当  リズケン研究員・藤川 真由美
「Bembe」 MILTON CARDONA

 バタ&コンガ奏者、そしてシンガーとして数多くのレコーディングに参加していながら、個人作品は2枚しか出ていないというミルトン・カルドーナのファーストアルバムを紹介しようと思います。

 ミルトンカルドーナといえば、ウィリーコローンのバンドにいた人だとかキップハンラハンでよく見かけるとかジャズのコンガ奏者だとか坂本龍一のレコーディングに参加しているとか。人によって様々な印象があるのではないでしょうか。そんな中で、このキューバのサンテリアを演奏しているアルバムというのが、彼の側面を断片化していると思われます。
 
 しかし今回は、ミルトンカルドーナのことより、サンテリアに焦点を当てて紹介いたします。

 
 スペインが奴隷を輸入しキューバに送り込んでいた時代、黒人達はカトリック信仰が強要されていました。しかしヨルバ系の人々の間では、アフリカ渡来の神々の信仰を行っており、オリシャという名で呼んでいたのです。そこで、それらのアフリカの神々はカトリックの聖人たちの名前で呼ばれ、同一視され、性格も変わっていきました。
 こういった宗教融合から、キューバ黒人密教のサンテリアが生まれたのです。

 このサンテリアの儀式で用いられるのがバタと呼ばれる太鼓で、大きく音の低い順にマイヨール(イヤー)、セグンド(イトテレ)、オコンコロと名付けられています。
 バタの両面はそれぞれ違う高さに調律できるので、合計6種類の音でポリリズムが奏でられることになります。そのリズムの組み合わせによって、異なる神を降霊するのです。

 それぞれの神によって演奏される内容はほぼ決まっていて、 ここではアルバムの最初にも収録されている「エレグア」の基礎パターンを紹介しようと思います。
 バタを膝に置き、右手が大きいボカと呼ばれる面、左手はチャチャと呼ばれる小さい面を叩きます。







 このエレグアは、必ずサンテリアの儀式では一番最初に演奏されることが決められています。
 それは、オロフィーというみんなに尊敬されている
所謂偉い神を助けたことがあり、そのおかげという説。それから、エレグアはとてもわがままで嫉妬深い性格のため、一番最初に演奏をしないと怒り出すという説があります。

 このサンテリアというもの。神によって様々な物語があり、演奏パターンがあり、本当に面白いのです。
 
 まずはサンテリア入門編として、エレグアの演奏パターンを思い浮かべながらアルバムを聴いてみてください。演奏内容が少しでも理解できたならば、ますますのめり込むことでしょう。


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