前回のコラムで、自分のセットを組み上げるための考え方を示してみましたが、いかがでしたでしょうか。必要なものを必要なときに鳴らすというシンプルな考え方はプレイスタイルにも通じることなので今一度じっくり検討してみてください。
セットが組みあがったら次にやるべきことはサウンド作りです。
今まで、楽器の構造や構造によるサウンドの傾向についてはいろいろと書き連ねてきました。「こんな楽器だからこんな音」と言うのは確かにあるし、重要です。
しかし、もっと大切なのは
プレイヤーの腕 !! & 明確なサウンドヴィジョン
こんなことを言ってしまうと、今月の話は終わってしまいますが、とにかく演奏技術(いわゆる難しいことが出来ると言ったことではなく、あくまで楽器を鳴らすための技術)の違いによって、同じ楽器でもまったく違うサウンドになってしまうし、同じ楽器でもプレイヤーの好みの違いによって全然違う音作りになってしまう事は確かです。
今回は、このあたりのことを踏まえて楽器の音作りについて考えてみたいと思います。
§1 楽器の音に影響する外的要因
楽器は演奏者がアクションを起こすことで初めて音を奏でます。
「弦をこする、はじく」
「鍵盤を叩く」
「皮を叩く、こする」
「吹く」
と言ったいわゆる演奏行為ですね。当然、何もしなければ音は出ません。この演奏行為にまつわるサウンドに影響を与えそうな要因をドラムセットの手について考てみると、
1、スティックの握り方
2、スティックの振り方(ストロークの幅、ストロークのスピードなど)
3、ヘッドとスティックの接触の仕方(スティックのあたる場所、スティックの入射角度、接触時間や接触面積、リバウンドの処理など)
4、その他の要因(おそらく無限にあるでしょう。)
なんだかいろいろあって難しそうですね。
でも、これらの要因が一瞬のうちに起こることを思えば、叩き手が変わればサウンドも変わることがわかっていただけると思います。
これらは、全て演奏技術に関することになりこのコラムの趣旨から離れてしまいますので、RIZKEN講師の方々によーくご教授してもらって下され。
§2 音作りの基本「チューニング」その前に.....
外的要因はちょっとおいておいて、実際の音作りについて考えてみましょう。
ドラムの音作りといえば、真っ先に思い浮かぶのが「チューニング」だと思います。当然、音作りに際して最も重要な要素であることは間違いありません。
チューニングに関して悩みを抱えているドラマーは多いことでしょう。チューニングに関するテクニックについては様々な事柄がいろいろなところで取り上げられていますが、いざ実践しようとするとなかなかうまくいかないことも多いはず。
それは、いわゆるセオリーと呼ばれるものが必ずしも貴方の求める音作りにピッタリと当てはまらないケースが多いからです。セオリーを理解することも非常に大切ですが、その理屈が自分にとってどうなのかを考えることがさらに重要なのです。
自分の出したい音はいったいどんな音なのか?
これによって当然チューニングのやり方も変わってくるはずです。まずは、自分自身をしっかり理解することから始めましょう(答えが見えていれば、そこ目標に音を作ることが出来るから)。
では、チューニングについて.......といきたいところですが、その前に!
チューニング段階でドラムサウンドを左右する物的要因について考えてみたいと思います。
1.ドラムヘッド
ドラムサウンドはスティック(またはペダルビーター)によってヘッドに打撃を加えることで発生します。ということは、ドラムヘッドの性格の違いがサウンドの違いに直結するということになります。
しかし、ヘッドの種類をあれこれ試す人が意外なほど少ないのが実情です。サウンド作りで悩んだらヘッドを違う種類に変えてみることもひとつの手です。
一言でドラムヘッドといってもその種類は様々です。フィルム(クリア、ホワイト、ブラック、繊維など)の違い、コーティングの違い、構造の違い(シングルプライ、ダブルプライ、ドットの有無など)など、いろいろな形のものが無尽蔵に発売されていると言っていいでしょう(逆の発想をすれば、いろいろなサウンドバリエーションをつけるためにそれにピッタリのヘッドが存在するということ)。ヘッドの違いによるサウンドの変化は、実際に体験してみることが一番です。
皆さん 面倒くさがらずいろいろ試してみましょう。
2.スティック
ヘッドの次はスティックですが、これは以前に書いているのでここでは省略しましょう。とにかくスティックによっても音は変わります。
3.フープ
ヘッドをドラムシェルに固定するフープの違いもサウンドに大きく影響します。フープの素材(スティール、ブラス、チタン、亜鉛、アルミ、ウッドなど)、形状(フランジの数と方向、プレスかキャストなど)、重量など、おそらく皆さんが思っている以上に大きな変化が得られるはずです。これも以前のコラムを読み返してみてください。
4.その他
テンションボルトやワッシャ、スネアなら当然スナッピーなどいろいろあるんです。皆さん、細かい部品だと思って侮らないように!!!
と、まあいろんな要因によってサウンドが変わってくることがおわかりいただけたのではないでしょうか。長年ドラムに携わってきた人であれば感覚でわかっていることでしょう。この違い、理解しなくてもいいですが、感じ取ってくださいね。絶対役立ちます。
§3 チューニングのセオリーについて
先ほどもチラッと書きましたが、チューニングに関するテクニックについては様々な事柄がいろいろなところで取り上げられています。
ボルトの締め方、テンションのかけ方、ピッチの合わせ方、上下ヘッドのバランスetc.
基本は本当に大切です。なぜなら、それが基本となりその他全ての応用のもとになるからです。では、セオリーどおりにチューニングしていればいい音が作れるかというとまた話は違ってきます。
いい音とは、貴方が好きな音、貴方の音楽にはまる音。
ということは、ドラマーひとり一人、ドラム1台1台で答えは違っていきます。
要するに、貴方が欲しい音が確実に出せる方法、貴方がやりやすい方法、それで良いんです。ただし、これだけは注意して欲しいということをあげてみますので参考にしてみてください。
1.ヘッドは、ヘッド自体のテンションが出来るだけ均一な物を選ぶ。
2.ヘッドは必ず打面の中央に乗せる。
3.ある程度のテンションがかかるまでは、均等にテンションがかかるように慎重にボルトを締める。
チューニングを始めるときにこの3点だけ気をつけてもらえば、あとは貴方の好み次第。そして、ミュートすることで簡単に好みの音が作れるのであれば、どんどん活用しましょう。
でも、
「過ぎたるは及ばざるが如し」
ドラムヘッドのテンションは高すぎても低すぎても太鼓の能力を半減させてしまいます。ミュートのかけすぎもしかり。あくまで、貴方の好みと太鼓のキャパのバランスを感じながら作業を進めてください。
まとめ
今回は、チューニングを中心にドラムの音作りについて話を進めてみましたがいかがでしたか?
結局は「自分の好みで」という、いつもどおりの内容になってしまいましたが、基準はやはり貴方の中にあるのです。方法はどうでもいいです。結果が得られれば。